佐藤:受賞おめでとうございます。もう書店にも並んでいますね。いかがですか、実感などわいてきましたか? 山川:あんまり変わらないかなあ、と思っていたのですが、近所の小さな本屋に自分の本が置いてあったりすると、さすがに実感が湧きますね。 佐藤:『学園カゲキ!』、かなり楽しく読ませていただきました。読んでいてビジュアルがばんばん浮かんでくる文章で、キャラクターもイキイキとしていますよね。マンガや映画など、映像から受ける影響が、けっこうあるのかな?と思ったのですが。 山川:そうですね、小説よりもマンガや映画の影響が大きい気がします。小説を書いていても、まず映像で頭に浮かんでくるので、それを文字に置き換える感じです。 佐藤:よし☆ヲさんのイラストも、すごくマッチしていますね。 山川:書いているときは、キャラクターの顔までは浮かんでいなかったので、いただいた絵を見たとき、新鮮でした。よし☆ヲさんで本当に良かったです。今や、この顔で物語が動いています。 湯浅(担当者):よし☆ヲさんにも、とても気に入っていただけているようで。はじめに原稿をお渡ししたときも、すぐにラフを上げて下さったんですよ。
佐藤:山川さんは、いつごろから、物書きになろうと思ってらっしゃったんですか? 山川:中学時代から、小説のようなものは書いてました。書き上げて、賞に応募するようになったのは、8年ほど前です。 佐藤:8年間、書き続けてこられたんですか! 山川:そうなんです。この間の小学館ライトノベル大賞の授賞式でお会いした際に気がついたのですが、歳が一回り下の受賞者さんもいらっしゃるんですね……。ビックリしたんですが、そうか8年間も送ってりゃそうだよなと、へこみました(笑)。 佐藤:いやいや、晴れの舞台でへこんじゃダメです(笑)。では、その8年前、はじめに賞へ応募したのには、何かきっかけがあったんですか? 山川:当時、勤めていた会社が嫌で、いつか辞めてやろうと思っていたんです。でも辞めるにはなにか他にできることを見つけなければならない。そこで、「好きな小説を書いて暮らせれば良いな、よし小説家になろう」と。……自分で言っててもどうかと思う、ネガティブな理由ですが。 佐藤:いや、ネガティブなところからはじまったとしても、それを8年も書き続けるには、相当なパワーが必要だと思うんですよ。 山川:一番最初に応募した作品が、何の間違いか一次選考を通過してしまって。もしかして自分はイケるんじゃないか、と勘違いしてしまったというのも原因じゃないですかね。あとは、まあ、きっと基本的に私は、辛い状況にいる自分が好きなんだと思います。 佐藤:逆境に燃えるタイプなんですね。しかも肉体でなく…… 山川:はい、精神を痛めつけるのが好きなんです(笑)。 佐藤:8年間の投稿生活、その間の周囲の反応は、どうだったんですか。 山川:妹に読ませたことがあるくらいで、ほとんど誰にも読ませていません。自分で書いて自分で読むだけでした。 佐藤:普通だと、他人に見せて、ここが良い悪いと言われる中で磨かれていくじゃないですか。そういう意味でのキャッチボールの相手が、自分自身という感じなんですかね。過去に書いたものが、指標になったりしますか? あのときのあの作品よりはうまくできたな、とか。 山川:ありますね。過去の作品と比べて、今回のは面白くないと感じたり。 佐藤:ありゃ、逆ですか(笑)。プロットは、どのくらい組み立ててからはじめますか? 山川:私の場合、ガチガチに固めないと書けないんです。書いてる途中で、話が脱線しそうになったりしますし、つらくなることが分かっているので、最初にプロットを決めて「この通り書くんだ!」とストイックに書き続けます。 佐藤:『学園カゲキ!』も、そのように? 山川:そうです、最初にオチが決まっていて、そこに向かって書き続けました。 佐藤:詳しくはネタバレになってしまうので載せられないと思いますが、とある映画を彷彿とさせますね。最近のバラエティ番組のつくりなんかとも、リンクするものがある。この設定はどういったところから生まれたんですか? 山川:その“とある映画”の影響は確かにあるんです。といっても、その映画を観たことはないのですが、テレビか何かで概要が紹介されていたのをメモにとってあったんですよ。もうひとつは、キャラメルボックスという劇団の舞台を観たときに、同じようにメモしていたものがあって、そのふたつを合わせたら面白いのではないかと……。 佐藤:『学園カゲキ!』は、ラブストーリーですが、なぜ、この構造を用いてラブストーリーを描いたのか、そこにすごく興味があるんです。 山川:だって、こうでもしないと、ラブストーリーなんて恥ずかしくて書けないです。 佐藤:ですよね! これはテレ屋が書くラブストーリーですよね。僕も『エウレカ※1』で、さんざん言われましたよ。もっとストレートにやれば伝わるのに、と。いや、そこは直接的には伝えたくないんだよ、という。 山川:すごい、わかります。 佐藤:構造を披露することが目的なのはなく、男の子と女の子の恋愛を描きたいがストレートには無理だから、構造を利用したというところに、僕と似ているものを感じたんですよね。でも、最後のオチが決まってしまっていると、書いてる途中で飽きませんか? 山川:飽きますよ。だからプロットを決めてしまうんです。プロットを作ったものは、すべて書ききっています。本当につらいんですけど、このプロット通りにやれば形になるから……と言い聞かせて書くんです。やはり、つらいのが楽しいんでしょうか。実際、できあがったものを見ると、また書こう!と思いますしね。 佐藤:ご自分の苦境を笑ってしまうところが、この作品の主人公の少年※2に似てる気がしてきました。 山川:! まったく意識はしていなかったですが、言われてみれば……(笑)。
佐藤:これまで書かれた作品は、どういう傾向のものが多いんですか? 山川:ほとんどが、剣と魔法のファンタジーか、異能力バトルものです。そういうものが好きだったので、自分でも書いていたんです。でも、どうも面白くないんですよ。会話シーンなどは面白いのに、バトルに入ると途端につまらなくなるなあ、と。 佐藤:山川さんの中に、厳しい読者がいたわけですね。 山川:好きこそのものの上手なれ、とはいかないようで。バトルのない話にしようと思って書いたのが『学園カゲキ!』だったわけです。実は、この作品は、以前に、他の賞で落選しているんです。でも自分的にはこれは絶対に面白いと思っていて、何年も推敲を重ねていました。 佐藤:一度落選してしまった作品の推敲も続けるんですか? 山川:この作品だけですね。そろそろ、もう一度どこかの賞に出そうと考えたのですが、バトルもない話では、受け入れてくれるところは少ないかもしれないとも思いました。で、既存のレーベルと違ってまだカラーのないところなら、ラブストーリーであることを理由に落としはしないだろうと、ガガガ文庫さんに投稿したんです。 佐藤:正解だったわけですね。第二次、三次と、審査結果が発表されていきましたが、ずいぶんドキドキしていたんじゃないですか? 山川:そうでもないんです。何しろ、こんなことを8年やっているので。送ったら、もう次の賞のための作品に取り掛かっているんですよ。 佐藤:では、別に特に待ってはいなかったところに、電話が掛かってきたわけですか。 山川:はい(笑)。その時も、次の作品を書いていました。「小学館? 何か関係あったかな?」と、ポカーンとしちゃって。 佐藤:まあ、半年くらい経っていますしね。 山川:「応募してくださいましたよね?」と言われて、はいはい、しましたしました! と、ようやく思い出したんです。でも、実は、3作品送っていたんで、最終選考に残ったのが何なのか、僕には分からなかったんですよ。「何がですか?」と、自分から聞くわけにもいかず、相手がタイトルを言ってくれるのを、ずっと待っていました。 湯浅:確かに、間が変だったと思います。佐藤:驚きとか喜びの間じゃなくて、探り合いの間ですか。 山川:そこでは結局出てこなくて。その次に最終選考結果の連絡があるまで、1ヶ月ばかりですか、「何が残ったんだろう?」と悶々としていました。 佐藤:それで、この作品だったと知って、どう思いましたか? 山川:他の2本は、剣と魔法のファンタジーと、異能力者のバトルものだったので、案の定だ、と(笑)。やはり自分には、バトルものはダメだったと、納得しました。 佐藤:『学園カゲキ!』は、剣と魔法も、超能力もないライトノベルというものを提示してくれました。この作品の読者が、第2回大賞に応募し、さらにガガガ文庫の可能性を広げてくれると良いですね。最後に、これから作品を読む読者さんや、もしくは投稿に向けて執筆に励んでいるみなさんに、メッセージをお願いします。 山川:小学館ライトノベル大賞には、こういうものを受け入れてくれる懐の広さがあります。この話を読んでもらって、「こういうのでもイケるんだ」と思っていただけたら本望です。いままで私は、他のひとの意見を聞いたことがないので、感想を言ってもらえることが嬉しいです。それが、いちばんの収穫だとお思っています。読んで、感想を書いてくださったりしている方、ありがとうございます。 佐藤:僕ね、この作品はテレビアニメのシリーズものに、すごく合っているなって思うんです。 山川:夢のまた夢みたいなお話しですが……。 佐藤:そういえば、実は、妹さんが声優さん※3なんですよね? 妹さんの声をイメージしたキャラなんてあったりするんすか? 山川:ないですよ、一切ないです(笑)。
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