佐藤:受賞、そしてデビュー、おめでとうございます。 神崎:ありがとうございます。 佐藤:まず、気になるのは、どうしてこの賞に応募したのか、なのですが。 神崎:佐藤さんがホストをされていたガガガトーク※1がきっかけですね。1年前(2006年春)にガガガ文庫の創刊準備サイトが立ち上がったときから、なんなんだこのレーベルは? と様子をうかがっていたんですが、まもなくはじまったガガガトークを見て、ここは面白そうだなと思い始めました。それで同じ年の夏に出た『ライトノベルを書く!※2』を買って読んでみて――ここに応募しようと決めました。 佐藤:うわ、仕組まれているかのような話の流れだな。ま、でも、そういう露出しかなかったわけですし、そんな感じにもなりますかね。小説家にはわりと昔からなりたいと思っていたのですか? 神崎:そうですね。物語を書くことを仕事に出来たらいいな、とは思っていました。 佐藤:これまでに最後まで書き上げた作品は、いくつくらいあるんですか? 神崎:あまり多い方ではないかと思うのですが、4作です。長編が3つと短編が1つですね。その内の3作はそれぞれ賞に応募しました。 佐藤:その1作目、生まれて初めて小説を書き上げたときは、やっぱり気持ちよかったですか? 神崎:ええ、夜の街で自転車とばして叫びました(笑)。精神的にキてました。 佐藤:キますよね〜。そのあと、すぐに次の作品に取りかかれました? 神崎:はい。その感覚を忘れないうちに――というか、間を空けると執筆の腕が鈍っちゃいそうな気がしたので。並行して、創作技法と言いますか、小説の書き方についての情報を図書館やネットで調べて勉強してもいました。冲方丁さんの『冲方式ストーリー創作塾』も読ませていただきました。 佐藤:それは、意味的に使えそうなものを? それとも、字面や音がおもしろいもの? 神崎:両方ですね。そういったものを集めたネタ帳をつくったりもしています。
佐藤:『マージナル』は、ミステリー的要素もあるサイコサスペンス、ですよね。これまでもそういう話を書いていたんですか。 神崎:ジャンルは書くたびに変わっています。ホラーだったり、ラブコメだったり。やりたい作品のイメージはいろいろとあるのですが、中でもいつかサイコものをやりたいな、とは思っていたんです。でもライトノベルでやるには受け皿がないかも……と二の足を踏んでいたところに、ガガガ文庫が現れた。 佐藤:すごい、運命の出会いだ。応募すると決めてからは、ガーッと書いたのでしょうか。 神崎:2ヶ月くらいで書き上げたあとに、1ヶ月間は推敲に時間をかけて、原稿を直していきました。 佐藤:出来上がった作品には、相当自信があったんですか? 神崎:いえ、全然です。読んでもらった友人からの評価はかなり厳しかったので、一次選考が通れば御の字かな、くらいに考えていました。 佐藤:そういえば、あとがきにも書かれていましたが、最終選考の結果報告の日の付近でいろいろあったんですって? 神崎:ええ。バイト先がつぶれたり、入院したり。最終選考の結果報告の電話をいただく数日前のことなんですが、部屋でひとりでいるときに、突然、腹部に激痛が走り……命からがら自分で119番を回しました。当時ノロウィルスが流行していまして、「ノロじゃないか」と言われて、隔離病棟に入院するハメになったんです。結果的にはノロウィルスは関係なかったんですが……。 佐藤:隔離病棟! 望んで入れるものじゃありませんからね。今後いいネタになりますね(笑)。でも、ということは身も心も相当ギリギリの状態で、報告を受けたわけですよね。どんな感じだったんですか。 神崎:ものすごくうれしかったですけど、その辺の記憶は客観性を欠いていると思うので、担当さんに聞いてしてください(笑)。 佐藤:そうですね。Yさん、どうでした? そもそもこの作品との出会いはどのあたりだったんですか。 Y:3次選考ですかね。僕が読む前に気になったのは(うろ覚えなんですが)、1次選考を担当した方の選考シートのコメント欄に「おもしろいが、大丈夫か?」みたいなことがたしか書いてありまして。 一同:(笑)。 Y:どういうことなんだろうと思って読んでみると、なるほど、と。たとえば、主人公が他人を殺したくてたまらないと思っているわけです。もしこういう作品が賞を取ったり、中高生向けに出版されたりするのはレーベル的に、あるいは会社的に大丈夫かな、ということは、選考の過程で読んだ人みんなが考えたことだと思います。その点については、最終選考にあげる前に編集部で話し合いました。 神崎:なんだか、すごい話を聞いてしまっている気がします。恐縮です。 佐藤:そのあたりから神崎さんの担当をすることに決まって、作家と担当編集者という付き合いがはじまったわけですね。 Y:会う前にはやはり、こんなにも「殺す」という字が頻発する※3小説を書いているけれども、どんな人物なんだろう……とは少しばかり思いました(笑)。まあ、神崎紫電が実際はどういう人なのかについては、読者のみなさんのご想像におまかせします。 話を戻すと、大賞受賞の連絡をしたときの様子は──たぶん、呆然としてらっしゃったんじゃないですかね。 神崎:ほとんど記憶にないんですよね〜。 佐藤:記憶ないんだ。 Y:何度も「いいんですか?」と言っていたような(笑)。
佐藤:ところで、神崎さんは、去年の秋にはじまった『Dexter(デクスター)』というドラマはご存じですか? 連続殺人犯専門の連続殺人犯の話なんですが。 神崎:いえ、未見です。しかしそれは面白そうですね。 佐藤:ちょっと『マージナル』に通ずるところがあるでしょう? 『Darkly Dreaming Dexter』という小説が原作なんだけど、その翻訳本※4は日本でもでています。というような符号はともかくとしても、神崎さんの作品には、なにか海外の作品の匂いを感じました。人称を少しずつズラしながら、章を進めていき、やがて大きな事件につなげていく……という流れとか。 Y:それは、僕も感じました。もしかして、なにか海外のサスペンス作品に元ネタでもあるのか? と思ってしまった。 佐藤:そういう影響って何かあったりしますか? 神崎:どうでしょう… 海外のドラマはそこまで熱心に観てはいないような気がします。断然、日本の作家さんからの影響が強いですね。 佐藤:プロットは、けっこうしっかりつくるタイプですか? 神崎:プロットはもちろん作るんですが──ただ、実は今回、プロットをまとめている途中で、書き進めたいという気持ちが我慢できなくなってしまったんです。後半をよく詰めないうちに、書き始めてしまった。設定を詰めたり、構成を練ったりしているうちになにか、とっとと書いてしまいたくなりました。 佐藤:なるほど。たしかに後半には、そういう勢いとかパワーとか、良い意味での強引さ(笑)を少なからず感じました。京也の魅力が爆発するのも後半で、彼の存在が物語をぐいぐい引っ張っている感じ。キャラクターの魅力がプロットを上回っていくんですよね。はみ出していくというか。ライトノベルとしては、ある意味、すごく理想的な展開かもしれませんね。
佐藤:ガガガ文庫の創刊のラインアップにご自分の作品が入るということについては、どう思われましたか。 神崎:ただただ驚きました。自分がどうとかいうより、一読者として。田中ロミオさんを持ってくるのは反則ですよ! 佐藤:僕も驚きましたからね! そんなガガガ文庫にこれから期待することはありますか? そして、最後に読者さんにメッセージをお願いいたします。 神崎:いや、もう、この調子で行っていただければ。「跳訳」とかも楽しみですし、僕にはなにも言うことは………! そして、そんな中で、僕もがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 佐藤:初取材、答えていただいて、ありがとうございました。『マージナル』は、たしかに際どい嗜好を持っている人間たちの物語なんだけど、読んでいて僕の頭に浮かんだのは、“偽悪"という言葉でした。“偽善"の反対、悪になりきれない悪、みたいな。『マージナル』というタイトルにも表れていますが、そのラインを超えるのか超えないのか、ハラハラしながら読んでいただけたら良いな、と思いますね。
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